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『となりのイスラム』内藤正典さん|本を読んで、会いたくなって。

イスラム教徒と仲良くする方法とは?

ないとう・まさのり●1956年、東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。社会学博士。専門は多文化共生論、現代イスラム地域研究。著書に『イスラム─癒しの知恵』(集英社新書)、『ヨーロッパとイスラーム』(岩波新書)ほか多数。

撮影・森山祐子

 とにかく大忙しなのである。

「今日は朝8時から政財界の面々と朝食会。このインタビューのあとも大手町で講演です」

 内藤正典さんが専門とするのは現代イスラム地域研究。研究室に籠って文献を読むのではなく、イスラム教徒が多く住む国に暮らし、たくさんのイスラム教徒に会って話を聞いてきた。その経験からごくふつうのイスラム教徒がなにを考え、どんな暮らしをしているかをわかりやすく書いたのが本書だ。

「確かにイスラムに関する報道は毎日ありますが、ほとんどはテロと戦争のこと。近い将来世界の人口の3分の1がイスラム教徒になるというのに、私たちは彼らについてあまりにも知らないのです」

 わかりにくさは本音と建前の違いにあるのかもしれない。たとえばイスラム教徒は豚を食べないが、「コーランに書いてあるから、これは絶対。でも、もし知らないで食べてしまったとしても罰則はないんですね。他に食べるものがなければ食べていいとも書いてある」

 あれ? イスラム教って意外と寛容なのかも?

「イスラム教徒は戒律にしたがって生きています。その結果うまくいっても失敗しても、それは神様が決めること。失敗しても悔やんだりしません」

 いわば、責任を神様に丸投げしている状態。いま日本で流行りの“自己責任”の正反対ではないか。
「ストレスを貯め込まないためのメカニズムを社会が持っているということ。過労死やストレスからくる自殺が多い日本でも、このへんは学んだほうがいいと思います」

「人を差別しない」「子どもやお年寄り、女性を大切にする」など、内藤さんの話を聞いていると、イスラム教、いいなあと思えてくる。

「そりゃあ暴力と女性抑圧の宗教じゃ誰も信者にならないでしょう」

 確かに。では今後も増え続けるイスラム教の人たちと、私たちはどうつき合ったらいいのだろう?

「1980年代の後半、パキスタンやバングラデシュから若い労働者がやってきました。面白いのは、彼らのことを最初に理解したのは非正規で働く女性たちでした」

 食べるものの選択肢がすくない彼らに、彼女たちはお弁当を一緒に食べようと誘った。
「この、分かち合うという文化。これはまさにイスラム的です。そして、豚肉を食べられないと聞くと、こんどは鶏肉にしよう、と」

 そうやって交流が生まれた。

「それでいいと思います。知識として知るよりも、実際のつき合いの中で少しずつ、だんだんわかっていく。それが大事だと思います」

ミシマ社 1,600円
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