わかりにくさは本音と建前の違いにあるのかもしれない。たとえばイスラム教徒は豚を食べないが、「コーランに書いてあるから、これは絶対。でも、もし知らないで食べてしまったとしても罰則はないんですね。他に食べるものがなければ食べていいとも書いてある」
あれ? イスラム教って意外と寛容なのかも?
「イスラム教徒は戒律にしたがって生きています。その結果うまくいっても失敗しても、それは神様が決めること。失敗しても悔やんだりしません」
いわば、責任を神様に丸投げしている状態。いま日本で流行りの“自己責任”の正反対ではないか。
「ストレスを貯め込まないためのメカニズムを社会が持っているということ。過労死やストレスからくる自殺が多い日本でも、このへんは学んだほうがいいと思います」
「人を差別しない」「子どもやお年寄り、女性を大切にする」など、内藤さんの話を聞いていると、イスラム教、いいなあと思えてくる。
「そりゃあ暴力と女性抑圧の宗教じゃ誰も信者にならないでしょう」
確かに。では今後も増え続けるイスラム教の人たちと、私たちはどうつき合ったらいいのだろう?
「1980年代の後半、パキスタンやバングラデシュから若い労働者がやってきました。面白いのは、彼らのことを最初に理解したのは非正規で働く女性たちでした」