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世界の名画を銅板で再現した
大塚国際美術館へ。

世界の名画約1000点を陶板で再現した大塚国際美術館へ。案内役は西洋文化史家、ドイツ文学者の中野京子さん。
  • 撮影・三東サイ 文・野路千晶
『イーゼンハイムの祭壇画』 マティアス・グリューネヴァルト

徳島県の北東端に位置する鳴門市には、世界25カ国、190余の美術館の名画1000点以上を、忠実な色彩とともに陶板で原寸大に再現し、日本最大級の常設展示スペースにて紹介するユニークな美術館がある。それが、西洋文化史家、ドイツ文学者の中野京子さんおすすめの「大塚国際美術館」だ。

「約10年前、用事のついでに何気なく訪れたのですが、その展示規模にびっくり。2、3時間では足りないから、必ず再訪したいと思いました」

以降、中野さんはあらゆる機会を通してこちらを訪問。美術館の中で丸一日を過ごすことも多いそう。

「午前中に展示を観て、レストランやカフェで食事をして、また展示に戻る。作品のジャンルは古代の壁画から印象派、現代絵画まで多種多様なので、好きなエリアから鑑賞をスタートするのも良いかもしれないですね」

世界最大規模の渦潮で有名な鳴門海峡がすぐそば。大鳴門橋と美術館の遠景。
印象派の画家、クロード・モネが愛した植物が息づく「モネの池」に臨む、『カ フェ・ド・ジヴェルニー』 10 時 30 分〜 16 時。 睡蓮の見頃は6月から9月末頃まで。

「陶板名画」にすることで本物とはひと味違う臨場感が。レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』など、通常は展示ケースやロープ越しでしか眺めることが許されない名作も、至近距離で魅力を堪能でき、作品との記念撮影も可。また、点在する連作やシリーズが一堂に集結しているのもうれしい。

「例えばレンブラント・ファン・レインの有名な自画像などは、全作を観るには世界各地を訪れないといけない。でも、ここに来れば代表的自画像すべてを同じスペースで鑑賞できるんです」

16世紀、薄暗い修道院でろうそくの光とともに公開されていたというマティアス・グリューネヴァルトの『イーゼンハイムの祭壇画』は、当時の状態に近い光量の空間が用意されるなど、展示方法にもこだわりが。

『ラス・メニーナス』 ディエーゴ・ベラスケス

中野さんが同館にて「ぜひ見てほしい」と話す作品のひとつが、ルネサンス期、ミケランジェロ・ブオナローティがヴァチカンの礼拝堂に描いたフレスコ画『システィーナ礼拝堂天井画』だ。

「現地よりも近くに天井画が見えるため、その細部をじっくりと確認できます。美術館スタッフによるガイドも、とても勉強になると思いますよ」

また、17世紀バロック期のスペインの画家、ディエーゴ・ベラスケスによる『ラス・メニーナス』は、中野さんの思い入れの強い作品だそう。卓越した画力をもちながらも、宮廷画家として不自由を強いられていたベラスケスが、自分に向けた憤り、そして「慰み者」と呼ばれた異形の人々への想い、ヨーロッパの時代性が、写実性の高い一枚の絵画の中に凝縮されている。

「構図や色彩だけではなく、背景にあるエピソードも名画の大切な要素。絵画を知れば、画家の想いもわかる。名画が集まるこの美術館で、そんな興味の入り口を発見できると思います」

『クロワッサン』935号より

●中野京子さん 西洋文化史家、ドイツ文学者/絵画の背景にある歴史と人間の暗部に着目した著書『怖い絵』シリーズで注目され、多数のエッセイも執筆。近著に『新 怖い絵』(KADОKAWA)が。

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