「80年前の男女の関係は普通なら埋もれてしまいます。面白いもので、人間って若くて気持ちにハリがあると物事を吸収しにくいものだけど、少し萎んだり凹んだりすると感受性に広がりが出てきますね。久美子の弟の孫にあたる里山あやめは、26歳の若さで人並みの幸せを諦めてどこか萎んでいるので、感性豊かに久美子とアンドレの秘密を解いていきます」
あやめは祖父の姉である久美子とアンドレの写真を持っている。そこに写った懐中時計も母の遺品の中にある。2年前に妻を亡くして凹んでいる鉢嶺良一の時計店にあやめが懐中時計を持ち込んで、物語は80年の時を挟んだ2つの恋愛を交互に紡ぐ形になる。恋のせつなさ、大胆な性愛描写、謎を追う醍醐味……実に面白い!