「北海道では一家での夜逃げなど普通の子どもなら暗さや影を帯びる経験をしても、北の富士さんは少年特有の遊びやスポーツを謳歌しながら仲間を楽しませる。逆境の時にも前向きで潔く生きるスタイルを子どものころから身につけていた気がします」
書名に「流」を付けたのには、相撲という“きわどい情をからめた真剣勝負”の世界で過ごすなかで北の富士が培った絶妙なバランス感覚に、相撲の枠を超えた男の生き様を感じたからだ。
「義理や任侠心を重んじつつ、北の富士さんはその時々で自分の力を発揮する時とだめな時を意識せずに使い分けていく。その分銅の振り方が鮮やかなのが、70半ばの今も見る人を飽きさせずに、現役でいられる理由だと思います」