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「お金のこと、冷静に考えさせてくれる本。」評・内田春菊|話題の本、気になる本。

『作家の収支』森 博嗣

幻冬舎 760円

38歳で作家になった森博嗣さん。19年で280冊の本を書き、総収入が15億円。その間の収入と経費について、ご自分の作品の内容などは横に置いといて、お金の行き来だけを淡々と追っているのがこの本。このような本はめったにないのでぜひともお勧めしたい。

私自身は、漫画家になったらホステスの頃に比べて急に跳ね上がった自分の収入に直面できず、仕事に集中したくてパートナーに任せていたら凄まじい搾取。いたわってもくれなくなり、「もっと働かないとお金ないよ(てめえが使っちゃってるからだよ!)」と言われ、辛くて他の男を好きになったら浮気と責められ、今でもその男に慰謝料を払っている。

育ての父の私への性的虐待をセッティングしていた母から「あんたが不良だったのが悪いんだから謝らない。実の母の私に金はくれて当然」と言われ頭にきて絶縁。

最後に結婚した相手もいつの間にか私より私の稼ぐお金の方が好きになっていた。このようなことを考えるだけでも逃げ出したくなってしまう。たとえ税理士に今までの数字全部出してもらっても、絶対にこんな本書けるはずがない。

私はお金より愛だろ、と考え過ぎなのかもしれないですね、いい年ぶっこいて。自分と同じかそれ以上の収入のある人と付き合ってみたいけど、そんな男は超「オレ様」のような気がする。たぶん縁もないだろうし絶対無理。

こんな私は森さんのクールさが羨ましくてしょうがない。小説の中の女性像やこの本からも感じられる、若い女性に対してだけではない優しい眼差し。きっと奥様とも素敵な関係なのだろう。しかし羨ましがるのはダメとこの本にもあるし、これからはお金のことも冷静に考えて生きていきたいものです。って、今までもそのつもりではいたんだけどね……。

うちだ・しゅんぎく●漫画家。1959年、長崎県生まれ。『私たちは繁殖している15』『私に依存するのはやめてください。』他。

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