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『ポーラースター ゲバラ覚醒 』海堂 尊さん|本を読んで、会いたくなって。

ゲバラの生涯を無名時代から描く新シリーズ。

かいどう・たける●1961年、千葉県生まれ。医師、作家。2006年『チーム・バチスタの栄光』でデビュー。本作の第2部にあたる、中米放浪編が文藝春秋の月刊誌『オール讀物』で連載中。2019年の革命編まで、全4部の壮大な物語になる。

撮影・岩本慶三

キューバ革命の英雄、アルゼンチン生まれのチェ・ゲバラ。写真などで姿は知っていても、漠然とした知識しかないのが一般的だ。

「僕自身、執筆前に知っていたのが、カストロと二人三脚でキューバ政権樹立に貢献して、途中で抜けてボリビアで死んだという程度。書きながら勉強しました」

人気シリーズを多く手がける海堂尊さんがあらたに着手したのは、ゲバラの生涯。ドキュメンタリー番組の取材でキューバを訪れゲバラを追ったのをきっかけに温めた題材で、本作はその第一弾。親友と南米を旅してまわる惚れっぽくていい加減で感受性豊かな医学生時代を描く。ペロン大統領やその妻エバ、中南米で憧れの存在だった詩人のボルヘスやネルーダなど実在の人物から、地雷原で出会う夫婦などの端役まで、次々と説得力あるキャラが現れ引き込まれる。史実のままでなくても、わくわくする物語を読み進めるうちに中南米史をたどるような展開は、歴史書よりも理解が深まる感覚だ。

「どこが戦争をして、どの将軍が死んでといった歴史的事実は変えないけれど、表舞台にいないときや無名の人は好き勝手に動かそうという方針です。この時代のゲバラは無名の兄ちゃんだから、割と史実からも自由に逸脱して(笑)。それこそ大量に過去の文献にあたっていますが、歴史書は暗記するような感じ。一方、小説家が書いた自伝や時代小説を読むと、歴史書の内容がすごくよく理解できるようになる。この本もそうなればいいなと思います」

曰く、1950年から20年間の中南米を巡る国際政治を網羅する。すでに200冊を超える関連書を読破し、集めた800冊はまだ増殖中だという。膨大な資料を読み解き、さまざまな伏線を張り巡らせつつ、多くの登場人物を魅力的に描きながら、歴史の大きな流れをおもしろいストーリーにまとめあげる。なんという力技!

「僕が唯一、自分に許している称号が“つじつま合わせの天才”(笑)。たとえば、ゲバラがすんなり大学を卒業したと書いたのも嘘。第2部の冒頭でボリビア革命にゲバラを参加させたかったからです。歴史では革命が成就したあとに訪れているけれど、それだと革命の様子を誰かが語る伝聞の形にするしかなくて説明っぽくなってしまう」

単なる英雄の物語にするつもりはないという海堂さん。

「革命の場ではいわゆるゲバラらしくストイックになりますが、それだけでは割り切れない部分も書きたいですね。まあ、まだ遠い先の話です。道ははてなく遠い」

文藝春秋 1,750円
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