「芸がないって? いやいや、自分でも慌てるけどね。でもやっぱりこれ。これなんだよねえ」
たとえば時代にあわせるとか、流行りのスタイルを取り入れるとか、そんな意識は五味さんにはない。さらには読み手のニーズとか、誰にどう読んでほしいかなど考えたこともないという。
「ニーズねえ。今の社会には○○が必要っていうけど、必要って、後付けという気がするんだ。ただ作りたいと思って作ってみたら、人気が出ました、残りました、ということでいいんじゃないかな」
絵本を描くときも、最初から伝えたいテーマがあるわけではなく、ただシンプルに面白いと思ったもの、描きたいものを描いた。それを見た子どもたちが「ん? 五味太郎って面白そう」となった。