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『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』ヨシダナギさん|本を読んで、会いたくなって。

アフリカに鍛えてもらった。感謝しています。

よしだ・なぎ●1986年生まれ。フォトグラファー。2009年に初めてエチオピアに行く。現在はアフリカの少数部族を中心に撮影を行っている。写真集に『SURI COLLECTION』(いろは出版)。2016年秋はエチオピアに行く予定。http://nagi-yoshida.com

撮影・森山祐子

 ヨシダナギさんは、子どもの頃、大きくなったら、自分も黒い肌になるのだと思っていた。

「マサイ族が日本にやってくるテレビ番組を見て、大人になったら、槍を振り回すんだって(笑)」

人とのコミュニケーションが苦手で、中学も行かなくなってしまった。でも21歳のとき、一人暮らしをしたら開放されたのか、前向きになって旅行に行くように。

「カルチャーショックを受けたくてインドにも行きましたが、あまりピンときませんでした。それなら大好きな少数部族に会えるアフリカはどうかと」

英語をまったく話せないのに、ひとり旅。できるだけたくさんの少数部族に会いたい一心で、ひと癖もふた癖もある現地のガイドと渡り合いながら、望みをつぎつぎと実現させてしまう。本著は、エチオピアを皮切りに、マリ、ジブチ、スーダン、ナミビアなどを旅したときの体当たりルポだ。

「他の国だったら怖いと思うこともなぜかアフリカだとできてしまう。ナミビアで憧れのヒンバ族に会えたときは、自分も裸になって衣装をつけ、赤土を塗りました。このときはさすがにガイドも目を剥いていました」

熱いパワーでぶつかっていけば、言葉の壁を超えて相手に気持ちが伝わるのだ。しかし、日本人として理解に苦しむことも増えてきた。

「ウガンダに行ったとき、何人もの死と直面したんです。亡くなった日は、家族や周りも悲しむのですが、翌朝にはケロッと笑っている。それに仕事を頼んでも真面目にしないで放り投げてしまうことが多い。あまりの違いにアフリカ人との距離の取り方がわからなくなって」

そんなとき、欧米の女性ボランティアに言われた言葉が今も忘れられない。

「『私たちはアフリカもアフリカ人も大嫌い。でも同時に大好きなの。好きなだけじゃアフリカとは付き合えないわよ』って。そう言われてから半年間悩んだら気持ちの整理ができて、適度な距離感とは何かが見えてきたと思います」

人付き合いが苦手だったひとりの女性の成長の記録としても面白く読める。本文中の写真は、旅のスナップとして撮影したものだというが、1年半前からは本格的に写真を勉強していて、この夏は少数部族を題材にした個展も開いた。

「何者にもなれないと思っていた私が、フォトグラファーとして世に出ることができた。これもアフリカのおかげです」

扶桑社 1,500円
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