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話題の本、気になる本。|衰退期の日本の姿勢を地方から問う。 評・ひうらさとる

『下り坂をそろそろと下る』平田オリザ著

講談社現代新書、760円

 演劇界の重鎮、平田オリザさんは私が住む兵庫県北部のという人口約三千人の小さな街に度々訪れて下さいます。なぜかというとこの街には〝城崎国際アートセンター〟という国内外の舞台芸術のアーティストが滞在する施設があり、オリザさんはここの芸術監督をされているからです。

 この『下り坂をそろそろと下る』にも詳しくありますが、私も度々お邪魔しては観劇させてもらったり、アフターパーティでアーティストと交流させてもらったりしています。

〝まことに小さな国が、衰退期をむかえようとしている。〟という『坂の上の雲』をもじった、日本にさらなる発展を夢見ている世代にはショッキングな一文から始まるこの本。

今の日本、そして地方のあり方を切り込んで行く描写、オリザさんの淡々とした穏やかな語り口を思い浮かべながら一気に読了しました。20年ほど東京でバリバリと仕事をし、あらゆる東京のカルチャーを欲しいがままに享受し、そして縁あって5年前に地方で暮らすことにした私には首がもげるほど頷く部分、「なんとなくこうなんじゃないかな? こうしたらもしかして?」と思っている部分が言語化されていて痛快。城崎だけでなく、四国、東北、東アジア、様々な場所の挑戦、現状、成功例、問題点などが、その土地土地に深く関わるオリザさんならではの視点で描かれていて、大変興味深いです。オリザさんが提唱する〝コミュニケーション教育〟のメソッドも詳しく書かれていて、「面白そう。勉強したいな」と思い、はっとしました。子供が学校以外で、そして学校を卒業した大人が〝勉強したい〟と思った時にその場があるというのが〝文化〟の一つなのかもと。私自身、年齢的にも〝下り坂を下りる〟時期にさしかかり〝下り方〟を優しく問われるような一冊です。

ひうら・さとる漫画家。兵庫県豊岡市在住。’84年『なかよし』でデビュー。『Ki
ss
』に「ホタルノヒカリSP」を連載中。

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