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『東京 記憶の散歩地図』小池壮彦さん|本を読んで、会いたくなって。

変わりゆく東京を散歩して記憶にとどめる。

こいけ・たけひこ●1963年、東京生まれ。さまざまな事件現場を訪ねるうち、町を迷い歩くこと自体が楽しみに。『怪奇事件の謎』(学研)、『心霊写真 不思議をめぐる事件史』(宝島社)、『日本の幽霊事件』(メディアファクトリー)など著書多数。

撮影・森山祐子

 本を読んで、歩きたくなった。青山から神宮外苑、六本木から元麻布など、路地をたどる東京の散歩道が全10コース。この本を手に歩き回って、公園の造成やマンションの建設工事ですでに様変わりしつつある土地があると、著者の小池壮彦さんに報告した。

「そうですね……2020年のオリンピックまでに、今、記憶している東京の景色がずいぶん変わってしまうでしょうね。オリンピック後も、2025年ごろまで予定されている工事がたくさんあるようなので、10年後の東京はきっと見違えると思いますよ」

 90年ちょっと前の関東大震災で東京の景色は一変し、70年ほど前の大空襲で焼け野原になって、私たちが見ている街は江戸からのつながりというより、戦後の復興と経済成長で作られた風景。

「これから再開発が進むと土地の特徴が薄れると思いますが、今はまだ知らない町を迷い歩くと、不思議なところに路地があったり、坂道があったりして〝これは川かな?〟と思いますね。調べてみると戦前まで川だったりする。私もそうなんですが、住んでいる町の昔のことって案外知らないので、散歩すると発見があります」

 といっても、むやみに歩き回って地形の謎を解くのは難しいかもしれない。練習のために、この本を持ってコースを巡り、その経験を踏まえて自宅の近所を散歩すると楽しいのではないだろうか。

「私は映像の仕事で昔の事件現場を訪ねて記録を調べたり、地元のお年寄りの話を聞いたりするうちに散歩が趣味になりました。渋谷の道玄坂も昔は相当、急な坂だったらしいですよ。麻布の暗闇坂の上の一本松、あれも明治になってから何回も植え替えてるんですけど、何回植え替えたかわからないらしいです。新しいことなのに、確かな記録がない」

 むしろ江戸時代の様子のほうがよくわかるのが、東京という街の面白いところかも。

「街のあちこちに歴史の豆知識を記した看板がありますよね。あれも多くは江戸時代に編纂された『』の記述に基づいています。それより後、明治からこっちのことは案外わからない。また、今は『江戸名所図会』の記録と現在の地形を比べることもできますが、はたして10年後それが可能かどうかは疑問です」

 ひょっとすると10年後、『東京 記憶の散歩地図』を手に街を歩くと、幻を追い求めることに?

「痕跡ぐらい何か残ってるんじゃないですか。むしろ変化の過程を散歩して見届けたいですね」

河出書房新社  1,600円
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