果たす「見守り」。たくさんの優しい母たちと特別な大きな母。互いを食い合い(愛をもって)、光合成をする人たち。はっきり語られることのない災厄を経て、人間は数を減らし、隔絶された小さな集団で暮らす。章ごとに視点も文体も切り替わり、いつのまにか読者は大きな物語の中にいることになる。
「書いているときは、すごく楽しかったです。小説家としては、今まで自分が使ったことのない語り方で書く、という欲望がありますが、それをまず試せたということ。原稿用紙10枚でデビューして、100枚書けるようになるまでがすごく大変で。それが一歩ずつ……書く筋肉をつけてきて、そうして今、その筋肉を全部使って書くという楽しさがありました」
物語の中でクローンやAIなど、今まさに現実世界で話題になっている事象も大きな役割を果たす。