facebook instagram twitter youtube
読む・聴く・観る・買う

手みやげをひとつ|長崎『藤井からすみ店』の俵物スライスからすみ

  • 撮影・森山祐子 文・嶌 陽子

海の珍味に秘められた、台湾と日本のつながり。

台湾に7年間暮らした経験を持ち、現地の生活や大衆グルメなどに関する著書を持つ作家の光瀬憲子さん。からすみを初めて食べたのは、台湾でのことだった。

「結婚式や、旧正月の集まりといった宴席で出てくるんです。赤い色がおめでたいとされ、台湾では縁起物。スライスした生の大根やにんにく、ねぎなどを乗せて食べることが多いですね」

中部の鹿港や、南部の高雄をはじめ、数々のからすみの名産地を抱える台湾。台北の乾物街「迪化街」には、からすみがずらりと並び、台湾の人の間では手みやげの定番になっている。実は、からすみの製造法は、日本統治時代に長崎から伝わったものであると、光瀬さんは現地の人に聞いて知った。

「そのこともあり、特に日本統治時代を生きたお年寄りは、当時知り合って仲良くなった日本人の先生や同級生に、お歳暮でからすみを贈る人が多いんです。私自身、高雄で知り合ったおばあちゃんに送っていただいたことがあります」

そんな日本とのつながりを知るようになって以来、自分でも度々手みやげにするように。長崎の『藤井からすみ店』の「俵物スライスからすみ」は、東京の伊勢丹新宿店に立ち寄った際に見つけた。

「比較的あっさりしている台湾のものに比べて、香りやねっとり感が一段上という印象ですね。一口ずつが真空パックされていて、その都度、新鮮なものを食べられるのもいいんです」

日本を拠点にする今も、取材などで頻繁に台湾を訪れる光瀬さん。現地で知って以来、胸に残っている言葉がある。

「『見面禮』といって、直訳すると、『会った時の贈りもの』。初めて会う人や、久しぶりに会う人に気持ちを伝えるため、ちょっとした贈りものをする習慣があるんです。よくこの言葉を思い出して、手みやげを持って行くようにしています」

光瀬憲子さん
みつせ・のりこ 作家

1972年、横浜市生まれ。アメリカの大学を卒業後、台北の英字新聞社に就職。台湾人男性と結婚、台北で7年暮らす。2004年に離婚し、帰国。近著に『美味しい台湾 食べ歩きの達人』(光文社知恵の森文庫)。

ふじいからすみてん●長崎市北浦町1983-22 ☎095 836 0036 営業時間 9時〜16時 日・祝日休。野母崎沖で獲れるぼらの卵を使って、昔ながらの技術で製造している。俵物スライスからすみ5枚入り 1、200円。東京では大丸東京店、伊勢丹新宿店などで販売中。取り寄せ可。
http://www.karasumi.co.jp/

文字サイズ