メディア・アートって何? 「表現」の新たな可能性に触れられる展覧会。
「いま」知っておくとちょっとイイこと、をテーマにお届けしている「クロワッサン倶楽部ニュース」。今日はこんなニュース、いかがですか?
文/古庄香哉(クロワッサン倶楽部読者モデル)
アートを、コンピューターやデジタルデバイスといったメディアと組み合わせて表現した「メディア・アート」。約1年の長きにわたり、無料で鑑賞できる注目の展覧会「オープン・スペース 2016 メディア・コンシャス」が、初台のNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]で、開催されています。
毎日の生活で使い、もはやなくてはならない道具であるメディアの数々。一つ一つの道具の中に、組み込まれたアートにじっくり触れてみると、普段の生活も、より新鮮な視点やビビットな色合いで、浮かび上がってくるかもしれません。作品をいくつかピックアップし、そのアイデアと表現をご紹介します。
まずは、私たちが日常、方位磁針や電子コンパスを内蔵したスマートフォンなどを通じて利用している「地磁気」の力を、可視化し、音で表した作品。
部屋には、コイルが取り付けられたグラスが数百個並び、それぞれのグラスには水と、磁化した縫い針が浮かんでいます。コイルに断続的に流れる電流による磁場変化の影響を受けた針が、ときおりグラスに当たって、日本庭園にある「水琴窟」のような繊細な音を発します。
次に、おなじみのスマートフォンが、料理器具とドッキングした新型「計量カップ」。「ここまで入れて」というグラフィックで、分量が画面に示されます。驚きは、水平だけでなく、カップを傾けた状態でも、決められた量にグラフィックが連動し変化すること。直感的に計量できます。料理の効率化に一石を投じた作品です。
「ランデヴー」は、歴代のメディアが、一挙に陳列された展示作品。作者の藤本由紀夫氏のメディアへの大いなる愛が感じられる空間です。レコードやタイプライターといった懐かしの道具に、見入りました。
目にしたことない、アンティークなメディアも。ステレオスコープは、20世紀初頭にヨーロッパで流行した「立体鏡」。立体視が施されたステレオ写真を覗くと、3D風景が浮かび上がってきます。形状としては、近年注目されているVR(仮想現実)で装着するHMD(ヘッドマウントディスプレイ)に似ています。遥か昔から、錯覚を利用した異空間を楽しむ文化があったことに、驚きを覚えます。
近代のテクノロジーを取り入れながら「視線の迷路」を造った作品も。
天井から吊るされた12個の枠。鏡やスクリーン、フレームのみの素材でできています。その間を縫って作品を見て回ると、鏡に映る自分、カメラを通してスクリーンに投影された自分、他者の姿をフレーム越しに発見したりと、視覚の迷路に入り込んだ気分になります。
結びは、熊本市現代美術館「STANCE or DISTANCE? わたしと世界をつなぐ『距離』」、六本木ヒルズ「Media Ambition Tokyo 2016」での展示も好評だった作品「The Mirror」。
仮想空間で再現された各地のランドマークを巡りながら、自己と他者の存在を意識させてくれます。今回の「オープン・スペース 2016 メディア・コンシャス」版では、地震前の熊本城も登場します。美しく記録された石垣を、360°全天画像で見上げながら、未来のアイデアに想いを馳せられてはいかがでしょうか。HMDというメディアを装着して。
「オープン・スペース 2016 メディア・コンシャス」
【会場】NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
【住所】〒163-1404 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
【期間】2016年5月28日(土)〜 2017年3月12日(日)
【休館日】月曜日(月曜が祝日の場合翌日)、年末年始(12/29–1/4)、保守点検日(8/7、2/12)
【時間】11:00 〜 18:00
【入場料】無料
【詳細】http://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2016/open-space-2016/
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