#10 あなたが素直になれない理由は
勝手な「先入観」のせいかも?
日常の小さな気付きから、社会問題まで。行政書士である筆者が、これまで相談を受けた経験と世の中の動きを元に、「夫婦を中心として人間関係を整える」ヒントを伝える連載コラムです。
我が家には、13歳になる犬がいますが、彼は4歳の時に貰われてきた里犬。知らない家に連れて来られ、小さな子供(当時3歳の娘)までいるので、当初は相当のストレスだったと思います。今はありませんが、夕方以降は誰かが触れようとすると、必ず唸られました。平穏な眠りを邪魔されて毎回イラっとしていたのでしょう。人間と同じですね。違うのは「あれ、オレはなんでイライラしてんだろ?」とは犬は考えられないところ。
怒りという感情は、動物が生きていくために必ず必要な感情です。人も自分を脅かす(かもしれない)相手に対抗して自分を守るために、「怒り」という感情を使っています。犬などの動物と同じく、本能的にね。当然意味のある感情なので、決して「負」の側面だけではないですよね。
前回はイラっとしたときの自分の怒りの下にある感情について書いてみました。今回は、ちょっと視点を変えて、さらに深く解剖してみようと思います。
前回のコラムでは、怒っているとき、その下にある「本当の気持ち」はなんでしょう?と問いかけましたが、実は本当の気持ちが見えなくなっている要素があなたの中にあります。例えば、あなたが散らかっている部屋を見てイラっとしたとき、きっと一緒にいるパートナーに対して「片づけてくれたらいいのに」と思っています。この気持ちの変遷を簡単に分解してみると、
いつも家事の負担は私ばっかり(不満のスタート地点)
↓
私だって忙しい(自分の言い分)
↓
相手が自分よりヒマそうに見える(相手と比べる)
↓
ヒマならやってくれたっていいのに(相手への期待)
↓
なんでやってくれないの?!(怒り)
だいたいこんな感じではないでしょうか。何を隠そう、10年くらい前の私自身はこんな感じでした(笑)。相手がヒマだなんて誰が言ったんでしょう? 誰も言ってませんよね。勝手に私がそう思っているだけです。ヒマだなんて言ってないし、実際は分からないのに、「ヒマならやってくれたらいいのに」なんて、なんと横暴な。論理展開が完全に破たんしています。
ここには問題が一つあります。「思い込み」と「期待」があることです。そしてこの思い込みは、「最初から不満がある状態」にあると固定化されてしまうということです。今回の例では、「私だって忙しい」を正当化するためには、相手が「私よりは忙しくない」状態じゃないと文句が言えない。ここでもうすでに文句を言う前提です。恐ろしいですね…。なので、勝手に「私よりヒマそう」という妄想が出来上がる。そしてこの「私よりヒマそう」は、なぜか「相手はいつもヒマ」になり、思い込みとして固定化されていきます。そもそも、この妄想も最初にある「いつも私ばっかり」という不満があるからこそ、そのあとの展開が自分を正当化する方向になるんです。客観的に見ていくと、これは思い込みによって作られた、不満を正当化するための言いがかりストーリーでしかありません。
イラっとしているときはたいてい、自分の持っているこうした「思い込み」に勝手に反応して怒っている状態です。そして、元々持っている「やっておいてほしい」という期待が、見事に裏切られたと感じるときに、「なんでやってくれないの?!」という怒りが湧くんですね。こうして冷静に見ていくと、おかしいでしょ?こうなるともう、完全に1人コント状態ですね。
思い込みが決めつけになり、勝手に持っている期待が裏切られたと感じる。こうして、妻は夫に怒りをぶつけるのです。この形は、「私は悪くない」というスタンスを取っているので、ものすごく素直じゃない。この素直になれない感情が、あなたが怒りの本当の気持ちを知る邪魔をしているんです。
「だって本当にヒマそうだし、もっとやってくれてもいいじゃない」という声が絶対聞こえてくると思いますが、だったら、怒りで不満をぶつける形ではなく、きちんとそれ以前の感情をパートナーに伝えませんか?忙しくて辛いのか、苦しいのかなど、本当は伝えたい想いがあるはずです。ただしそのとき、主語は必ず「私」にしてくださいね。私が辛い、私が苦しい、という伝え方はOKですが、例えば「ずるい」だと「あなたはずるい」ですから、それはあなたの決めつけですよ。
気持ちを素直に伝えるというのは、パートナーシップを作り関係の温度差をなくすのに一番の方法です。素直になれなくなる「決めつけ」のパターンに気付いたら、ひとつずつ捨てていけるようにできるといいですね。
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