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アーティスト・奈良美智さんが
東京国立近代美術館の作品をセレクト。

「いま」知っておくとちょっとイイこと、をテーマにお届けしている「クロワッサン倶楽部ニュース」。今日はこんなニュース、いかがですか?
文・川端なな(クロワッサン倶楽部読者モデル)

保育園に通う甥っ子や、友人の子供たちと遊んでいると、愛くるしい笑顔だけでなく、泣きじゃくって怒ったり、遊びに真剣で物思いに耽るような表情になったり、と喜怒哀楽がコロコロ変わって、真新しい人間だけが見せてくれる素直な表情に心が動かされます。

奈良美智さんの作品に出会った時に、幼児が時折見せる物憂げな表情とそっくりで、「子どもって、この顔するする!」と、無垢な人間が見せる一瞬の表情を捉えて描いている作品に共感して一気にファンになりました。

奈良美智《Harmless Kitty》1994年 アクリリック・綿布 150.0×140.0cm 東京国立近代美術館蔵 ⒸYoshitomo Nara
奈良美智《Harmless Kitty》1994年 アクリリック・綿布 150.0×140.0cm 東京国立近代美術館蔵
ⒸYoshitomo Nara

人間の細やかな表情や奥深い感情を表現している画家の奈良美智さんが、東京国立近代美術館の作品をセレクトした「奈良美智がえらぶMOMATコレクション 近代風景~人と景色、そのまにまに~」が5月24日から開催されます。

奈良さんは武蔵野美術大学で洋画家の麻生三郎師に学びます。その頃、奈良青年は師匠にかつての日本画壇の話を聞いたそうです。「麻生先生にお願いして松本峻介など、すでに他界した仲間たちの人となりを語ってもらう時に、僕は子犬のような眼をして真剣に先生の話を聞いていた」と語ったそうです。そんな思い出を巡りながら選ばれた作品は、美術史にとらわれることなく、好きな作品だけを選んだら、自然と1910~1950年代の人と景色を描く作品に絞られたそうです。

榎本千花俊《銀嶺》1942年 絹本彩色 68.7×73.1cm東京国立近代美術館蔵
榎本千花俊《銀嶺》1942年 絹本彩色 68.7×73.1cm東京国立近代美術館蔵

「『銀嶺』は戦時中の作品であり、派手さを抑えたモノトーンの画面なのだが、編み込みの手袋とスカーフに置いた色が画面に生命感を与えている。僕はそのようなセンスが好きだ。軍国主義の暗い時代にあって、ひょいと宙返りして見せるような軽やかさと軟らかさが好きだ」

松本竣介《Y市の橋》1943年 油彩・キャンバス 61.0×73.0cm 東京国立近代美術館蔵
松本竣介《Y市の橋》1943年 油彩・キャンバス 61.0×73.0cm 東京国立近代美術館蔵

「彼の絵にある文学の匂いは、10代の前半に病気で聴力を失い、その2年後あたりから絵を描くようになったという彼の心象風景に重なっていて、音も無く静かに澄んだ形で絵画上に充満している」

こうやって画家による絵の解説を受けながら作品を観ると、また違った味わいが出てきて、理解が深まり、絵を鑑賞するのが一段と楽しくなります。もちろん奈良美智さんの人気作品「Harmless Kitty」も所蔵品ギャラリー4階「ハイライト」コーナーに展示されるそうです。

奈良美智がえらぶMOMATコレクション 近代風景~人と景色、そのまにまに~

【場所】東京国立近代美術館
東京都千代田区北の丸公園3-1
【期間】2016年5月24日(火)~11月13日(日)ただし8月8日(月)~15日(月)は休館
【時間】10時~17時
※入館は閉館30分前まで ※金曜は10時~20時
【観覧料】430円(高校生以下無料)
【詳細】 http://www.momat.go.jp/am/exhibition/nara_selection2016/

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