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街中の「和のギャラリー」を探訪する。

文・写真/古庄香哉

街を思いのまま、ぷらぷら歩くのが、好きです。以前は、お洋服屋さん、インテリアショップ、本屋、レコード屋、美術館などを回っては、お小遣いをやりくりして、気ままな散策を楽しんでいましたが、最近よく目につくようになったのは、ギャラリー。それも器や茶道具がある「和のギャラリー」。着物や茶道に触れたら、視野が変わるようにできているのでしょうか、日本女性って(笑)。

南青山の路地奥に見つけた、和のギャラリーを探訪した様子を、お伝えします。

路地奥
 

いざ、ギャラリーへ!

「なんか気になる…」。コンクリート打ちっ放しのモダンビルの三階にある「寺田美術」。開放的な全面窓の奥に、都会の緑地がゆったりと覗いている景色もすてき。好奇心に誘われるがまま階段を上がり、shopギャラリーのドアを開けました。もうすでに、ちらりと存在感を放っている器たちに、心が奪われ始めます。

ガラス窓の奥に、ゆったり広がる都会の杜も、目を潤す。
ガラス窓の奥に、ゆったり広がる都会の杜も、目を潤す。
茶道具のほかにも、お重やグラスなど、普段の生活の品々を「見立てる」楽しさが提案されている。
茶道具のほかにも、お重やグラスなど、普段の生活の品々を「見立てる」楽しさが提案されている。
 

モノとの出会い。

ギャラリーを訪れたら、まず向き合うのはやはり、陳列された一つ一つの品々です。お茶の稽古の時も、茶碗を拝見をしますが、共同作業ですので一人だけじっくりと、好きなだけ愛でることはできません(ちょっぴり溜まった欲求不満を、この探訪で解消したりして)。

物モノの持つ、造形、素材、色彩、紋様を、集中して眺めては、その個性の理解に努めます。特に、各陶芸作家のシリーズ作品に、グッとフォーカスします。連なりがありつつも、個々に特徴が与えられ、際立つ違い。共通するテイストを保ちながらも、それぞれに独創のある世界観とは、どういうことなのか…というような問いを設定し、器から、その答えを導き出す。出会ったばかりのモノから直感的に得る「哲学的なひと時」です。

陶芸作家/三原研氏の作品群。土の質感とモダンな造形感覚が特徴的。
陶芸作家/三原研氏の作品群。土の質感とモダンな造形感覚が特徴的。
ざらつきとグラデーションの美しい変遷。いくら眺めても眺めたりない。
ざらつきとグラデーションの美しい変遷。いくら眺めても眺めたりない。
床の間にちょこんと飾られたアンティーク香合。十二単のような色彩の「紙釜敷」は、平安調の美にタイムスリップさせてくれる。
床の間にちょこんと飾られたアンティーク香合。十二単のような色彩の「紙釜敷」は、平安調の美にタイムスリップさせてくれる。
 

ヒトとの出会い。

ギャラリーを訪ねて、もう一つ楽しみにしているのが、人との出会い。店主の見立てによって、取り揃えられた店内の品々の美学を感じつつ、ご自身とお話しできるチャンスがあるかもしれない、のがギャラリーならでは(この日も、ちょうどいらっしゃいました)。イベント開催時にふるまわれるというお抹茶「一服」を有り難く頂きつつ、その美学の深部に「言葉」で触れられる至福。モノとヒトとの、バックストーリーは、知れば知るほど面白い。偶然、同席した方々と、会話を広げていくことも、あたらしい学びばかりで、キュンとします。モノを通したヒトの出会い、ゆったりとしたギャラリー空間だからこそ、いつもよりちょっと濃いのかもしれません。

店主の寺田ひと美氏。「和洋問わず、新しいものと古いものの共生」をコンセプトに。茶道(裏千家)の嗜みもお持ち。
店主の寺田ひと美氏。「和洋問わず、新しいものと古いものの共生」をコンセプトに。茶道(裏千家)の嗜みもお持ち。
「立礼棚」をモダンに発展させた机。ミニマムな造りが美しい。天板台は木工作家/佃眞吾氏の制作。
「立礼棚」をモダンに発展させた机。ミニマムな造りが美しい。天板台は木工作家/佃眞吾氏の制作。
モノを通した濃い出会い。美味しい一服。
モノを通した濃い出会い。美味しい一服。
 

そして、あたらしい自分との出逢い。

ヒトやモノからあたらしい刺激を受けたら…自分を省みたくなるのが、人の性。ゆったりと濃密な時を過ごしたら、仕上げに「自分の好み」を改めて追求します。導き出した哲学、お喋りの中で教えていただいた事柄を携えて、もう一度、物モノと対峙すると、ファーストインプレッションとは違った何かが、見えてくるかもしれません。そして、それはあたらしく現れた「自分の美学」なのかもしれません。器に宿ったそれらを、いつか自分の物として手元に置きたい。「いっぱい働いて、軍資金もって、また来よう!」。生きる希望をみなぎらせて、充実の「和のギャラリー探訪」は、幕が閉じるのでした。あたらしい季節、あたらしい街。色んな出逢いが楽しみです。

陶芸作家/小川待子氏の「水指」。卵のようなフォルム。水に、水滴に、躍動感を与えている。好き。
陶芸作家/小川待子氏の「水指」。卵のようなフォルム。水に、水滴に、躍動感を与えている。好き。
同じく小川氏の「花入」。永遠の女の子color「ピンクと水色」と、深淵な「土の質感」が、共存している。大好き。
同じく小川氏の「花入」。永遠の女の子color「ピンクと水色」と、深淵な「土の質感」が、共存している。大好き。
ガラス窓から望む街並も、作品の一つ。
ガラス窓から望む街並も、作品の一つ。
 

南青山「寺田美術」Antiques&Gallery
http://teradabijyutsu.jp
※常設shopの他に、随時、現代作家の個展も開催。

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