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日本酒カクテルを、隠れ家BARで味わう。

文・写真/古庄香哉

5年前まで、お酒が一滴も呑めませんでした。ところが、(奇遇にも着付をはじめとした和文化を覚えた時、同じくして)その壁を超えました。理由は二つ。一つは、歳を重ねて酵素分解機能が高まり、体質的にOKとなったこと。もう一つは良いBARに出逢ったから。今回は、その変化の中で覚えた「日本酒カクテルの味わい方」を、お伝えしたいと思います。

 

地下の隠れ家オーセンティックBAR「カナユニ」

看板のない扉を開け、地下階段を下りると、洞窟のような社交空間。進むにつれフェードインしてくる生演奏。三島由紀夫など、文豪たちも通った「創立50年の老舗BAR/カナユニ」。とっておきの隠れ家です。お酒初心者の私でしたが、伝説の編集長/島地勝彦氏の「甘い生活」というエッセイ本を読み、その存在を知りました。本から拡がる未知の世界。初めて足を踏み入れた際は、とびきりの勇気が…そこは酔いに期待してエイっヤ〜!!

「あと三段で到着」という高さまで下がると、「フルーツカクテル」の気配が漂ってくる。

「あと三段で到着」という高さまで下がると、「フルーツカクテル」の気配が漂ってくる。

三月初旬の季節の柑橘は「宮崎の日向夏」。日本各地の旬の果物が集結。

三月初旬の季節の柑橘は「宮崎の日向夏」。日本各地の旬の果物が集結。

シェイクする直前に「手動ジューサー」で絞られ、香りを振りまく果物たち。

シェイクする直前に「手動ジューサー」で絞られ、香りを振りまく果物たち。

 

日本酒カクテルを創り、味わう。

しずしずとカウンター席に座り「日本酒を使ったカクテルで、オススメはありますか?」と尋ねてみます。いつもは店の定番の、桃とプロセッコを使った「ベリーニ」、氷漬けのボトルに詰められた「リモンチェッロ」などをいただきますが、この夜は、すこし変わった和のカクテルをオーダー(5年間/100杯以上、通い続けてヤットコサの「おねだり」です)。

「つくりますよ。日本酒と抹茶が溶け合った…美味しいヤツ!」武居バーマンが、お茶目に応えてくれました。

カナユニ勤続 約40年のlegendバーマン「武居栄治氏」。いつも、ご機嫌、癒される。

カナユニ勤続 約40年のlegendバーマン「武居栄治氏」。いつも、ご機嫌、癒される。

島根県松江の日本酒「トヨノアキ アカ 純米五百万石」。グラフィティのような前衛的デザイン。

島根県松江の日本酒「トヨノアキ アカ 純米五百万石」。グラフィティのような前衛的デザイン。

メインの日本酒は、米田酒造「豊の秋」。海外流通も視野に入れているという、お洒落なパッケージデザインが目を引きます。かろやかな酸味としっかりとした旨味の効いた純米酒です。抹茶、サトウキビ由来の砂糖、お湯が混ぜ合わされ、ホットカクテルが出来上がっていきます。

必要なお道具は、抹茶と茶碗、茶杓と茶筅、ポット。

必要なお道具は、抹茶と茶碗、茶杓と茶筅、ポット。

まず抹茶と砂糖を入れ、次に日本酒を。50℃になるように、熱々の湯を適量注ぎ、点てる。

まず抹茶と砂糖を入れ、次に日本酒を。50℃になるように、熱々の湯を適量注ぎ、点てる。

茶道を習い始めて、3年生。そんな茶人見習いの私に、武居バーマンが、茶筅を手渡しながら仕上げのシャカシャカを譲ってくださいます(インタラクティブなコミュニケーションにも、酔い痺れる)。「その気泡、湯気の立ち上がり方、いいですねぇ…はい、それ位で止めて!」とプロの五感を使って、コーチングまでをも。純然たる「茶道」から、ちょっぴり逸した「真夜中の冒険」に、おもわず笑みが溢れます。

あしらいの金箔が、遊び心をくすぐる。

あしらいの金箔が、遊び心をくすぐる。

渾身の一杯は、コク深い味わいでした。抹茶の苦味に、スッとした日本酒の清涼感が加わり、その両者の幅を、砂糖の甘みがまろやかに繋いでくれます。温かなとろみが優しく喉を通り過ぎ、ふわふわの細やかな泡は、はじめ甘く、気がつくと日本酒の芳醇な香りが立ちのぼって。

デザートのような満足感が得られるとは、予想だにしていませんでした。チャレンジして初めて知る美味しさ、嬉しかったです。

名脇役。キューバ産サトウキビ由来の砂糖と、金沢の金箔。

名脇役。キューバ産サトウキビ由来の砂糖と、金沢の金箔。

 

最高の、学びの場、是即BAR。

カナユニで過ごす時間は私にとって、隠れ家での秘蜜の学び。一人で通っては、日本の「旬の果物」の名を覚え、舌で理解しました。また、目の前で繰り広げられるロマンティックなシーンを、刻々と眺めていました。スタッフの皆さんの、邪魔せず逃さずチャーミングにサーブするもてなしの心。誕生日や記念日で湧き上がる拍手、生演奏のリズムに身体をくゆらせる人々。ドラマの数々を目にし「悲喜こもごも、人の心に寄り添うスタイル」を、学ばせてもらいました。

残念ながら、カナユニは2016年3月26日で、その50年の歴史に幕を閉じます。理想とする大人のコミュニケーションを、リアルタイムに学べる、そして創造できる最高の場でした。

そうそう、共創した日本酒カクテル、武居バーマンに命名権をいただきましたので、「一期一会」と名付けました。カナユニで伝授された…多様性、ドラマ性、愉悦なチャレンジスピリッツを、自分の日常の一つ一つと融合して、これからも、進化/変態させ続けたいと思っています。

BARカウンター右端が、「いつもの特等席=最高の勉強机」。口福に感謝。

BARカウンター右端が、「いつもの特等席=最高の勉強机」。口福に感謝。

 

トヨノアキ アカ/米田酒造(島根県)
http://www.toyonoaki.com/kurabito/archives/2015/10/000634/

カナユニ
http://www.kanauni.jp

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