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迷宮の古都ヴェネチアで現代アート。
〜第56回ヴェネチア・ビエンナーレ(後編)

文/写真・西島奈央(クロワッサン倶楽部読者モデル)

対岸からサン・マルコ広場を望む。

対岸からサン・マルコ広場を望む。

2日目は、昨日とは打って変わって快晴〜♫

今日はアルセナーレを回る予定ですが、まずはカナル・グランデ河口突端にある現代美術館、プンタ・デッラ・ドカーナへ。ここはビエンナーレとは関係ないけれど、最初にアルセナーレに行ってしまうと今日はそれだけになってしまいそうだったので、こちらを優先しました。

17世紀の旧税関倉庫をリニューアルし、2009年に現代美術館としてオープンしたプンタ・デッラ・ドカーナ。オーナーは世界的な美術コレクターのフランソワ・ピノー氏で、安藤忠雄がリノベーションしたことで当時話題になりました。早く行きたいと思いながらやっと実現。ちなみに有名なパラッソ・グラッシとは姉妹館です。ここの改修も安藤忠雄。

プンタ・デッラ・ドカーナ入り口。

プンタ・デッラ・ドカーナ入り口。

たぶん避難経路を示している1階平面図。船の先端のような建物。上空から見ると切り妻屋根になっていて美しい。

たぶん避難経路を示している1階平面図。船の先端のような建物。上空から見ると切り妻屋根になっていて美しい。

3層吹き抜けの最初の部屋。ここはかなり作品数を絞って展示していました。

3層吹き抜けの最初の部屋。ここはかなり作品数を絞って展示していました。

エルムグリーン&ドラッグセットの作品。ホワイトキューブ(美術館)で展示することへの疑問を呈してきた彼らですが、これ以上ないくらい場所にマッチ。対岸に見えるのはジュデッカ島のレデントーレ教会。

エルムグリーン&ドラッグセットの作品。ホワイトキューブ(美術館)で展示することへの疑問を呈してきた彼らですが、これ以上ないくらい場所にマッチ。対岸に見えるのはジュデッカ島のレデントーレ教会。

入り口に撮影禁止のマークがありましたが、受付で聞いたらOKとのこと。最近は美術館も写真撮影OKのところが増えましたね。

もともとあったレンガの壁や天井の梁はそのままなのに、とても現代的に見える空間。安藤建築に特徴的なコンクリートの仕上げは、日本から職人さんを連れてきたと聞きました。ガラス、鉄、コンクリートが直線的でかつ正確に空間を区切り、ゆがんだレンガや木の梁と絶妙にマッチ。素晴らしい現代美術館に生まれ変わってます。リニューアル前は見てないですけどね。

コレクションもピカソやロダンから村上隆まで幅広く、3層に入り組んだ空間にかなりの数の作品が展示できます。毎回の企画展をコレクションだけで賄えてしまうなんて、フランソワ・ピノー財団恐るべし。

島の突端へは美術館に入らなくても行けます。サンマルコ広場やサン・ジョルジョ・マッジョーレ島が一望でき、水がすごく近いので気持ちいい〜。夜はデートスポットとしても人気らしいです。

岬の突端。街灯のあるこの場所には、開館から2013年までチャールズ・レイの「カエルと少年の裸像」が設置されていましたが、ヴェネチア市民の反対で撤去されてしまったそうです。早く来ておけばよかった。

岬の突端。街灯のあるこの場所には、開館から2013年までチャールズ・レイの「カエルと少年の裸像」が設置されていましたが、ヴェネチア市民の反対で撤去されてしまったそうです。早く来ておけばよかった。

水上のレストランはこれぞヴェネチア!メニューはかなりエクスペンシヴ!

水上のレストランはこれぞヴェネチア!メニューはかなりエクスペンシヴ!

なんてゆっくりしてたらもう14時。アルセナーレに向かわなくては。

水上バスに乗りアルセナーレ駅へ。降りてからて少し歩きますが、あちこちに看板があるので迷わず到着。昨日のチケットをピッとして入場。会場図面を見ると細長〜いつくりでスケール感がいまひとつわからなかったんですが、これがめちゃくちゃ広かった。入り口のブルース・ナウマンを皮切りに、大作ばかりずらり。はじめはじっくり1作ずつ見ていき、ビデオ作品などものんびり鑑賞してましたが、そろそろここの会場は終わりかなと平面図を見ると、まだ半分しか見てない! 大変、あと5倍はある。もう16時過ぎ、喉も渇いてきた。それからはほとんど駆け足。途中やっとあったカフェで一息。

企画展は見終わりましたが、まだ23のナショナルパビリオンがあります。完全に時間配分を誤ったと反省しつつ、とにかくGO!

アルセナーレ企画展から。これプリントではありません。9216枚のLCDパネル。20秒くらいでパタパタとポートレートが変わります。びっくり。トルコ出身のクトルグ・アタマンの作品。

アルセナーレ企画展から。これプリントではありません。9216枚のLCDパネル。20秒くらいでパタパタとポートレートが変わります。びっくり。トルコ出身のクトルグ・アタマンの作品。

ツバルのパビリオン。一番高いところが海抜4.5mのツバル。中央の渡り廊下を歩くとじわじわと水が浸水してきます。切なくなる作品。

ツバルのパビリオン。一番高いところが海抜4.5mのツバル。中央の渡り廊下を歩くとじわじわと水が浸水してきます。切なくなる作品。

先進国の多いジャルディーニと違い、中南米やアフリカ、ヨーロッパの小国が多いアルセナーレのパビリオン。ひとつひとつ心にしみるなーと思いながらも、ここまで来たのだから全部見る、とさらに足早に。

しかし一番端のラテンアメリカ館を出たところで、次のイタリア館まではかなり歩くことに気づき、ここで心が折れました。行くのはなんとか歩ける。だけど帰りはまた来た道を戻らなくてはいけないんだろうか ?小型バスのようなもので入り口まで送迎していたようなきがするけどまぼろしか? あと20分で何ができるの?自問自答するも、こんな中途半端なところで止まっていてもしょうがないのでとぼとぼ歩きます。

最後の最後にイタリア館と中国館。ウンベルト・エーコーのオマージュ? ピーター・グリーナウェイのトリビュート映像? それってどこ? とうろうろしていると、ここで閉館のアナウンス。急いで中国館をのぞき終了。出口はイタリア館の脇にもありました。出たのはいいけど、そこがどこだかわからず。たぶん水上バス乗り場へ向かっているのだろうと思わしき人々についていきます。

結局同じような距離を歩いてアルセナーレ駅まで。そしてこのあと再び雷雨に見舞われるのです。

西から怪しい雲が。この後雷雨に。

西から怪しい雲が。この後雷雨に。

ヴェネチア、2日だけでは無理がありました。今回ナショナルパビリオンで金獅子賞を獲ったアルメニア館は、水上バスで20分かかる離島にあるため最初からあきらめていましたが、非常に興味深い作品だったのでやっぱり行けばよかったと後悔しています。プラダ財団、マルニ、ジェニー・ホルツアー、グッゲンハイム、次こそは行こうといつも思うティツィアーノやティントレットなどのヴェネチア派絵画…どれも見れないまま。

ファッションブランドのマルニがオーガナイズしている展覧会を外観だけパチリ。ブラジル人アーティストの素朴な彫刻作品だそう。見たかった。

ファッションブランドのマルニがオーガナイズしている展覧会を外観だけパチリ。ブラジル人アーティストの素朴な彫刻作品だそう。見たかった。

余談ですが、リアルト橋の向こうに見えるクレーンは、ドイツ人商館をレム・コールハースがデパートにリノベーション中だそうです。いつできるかは不明。

余談ですが、リアルト橋の向こうに見えるクレーンは、ドイツ人商館をレム・コールハースがデパートにリノベーション中だそうです。いつできるかは不明。

後ろ髪引かれまくって全部抜けてしまいそうになりながら翌早朝の電車に乗りました。

今回は長期ブランクで勘が鈍っていたのと、家族旅行ということもあって見落とし多すぎました。丸5日は滞在しないと満足できない展覧会の数。ビエンナーレは年々大規模になっていくのでもう収集つかない感じです。それにアートだけでなく、映画、音楽、ダンス、演劇などほかの部門もあるので、堪能したければ1ヶ月くらいほしいところです。アートは奇数年開催で偶数年には建築ビエンナーレもやっています。便乗企画もたくさんあるし、全部見ようとせず、その時々の出会いを大切に思ったほうがよいようです。なにしろ予測不可能な街ですから。

春から秋にかけてヴェネチアへ行くチャンスのある方、一度ビエンナーレの魔法にかかってみてはいかがでしょう。

プンタ・デッラ・ドカーナ(伊・英・仏)
http://www.palazzograssi.it/en/museum/punta-della-dogana

ヴェネチア・ビエンナーレ公式サイト(伊・英)
http://www.labiennale.org/en/Home.html

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