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料理好きなら訪れたい、玄人向けの問屋街・合羽橋。

文/写真・藤島由希(クロワッサン倶楽部読者モデル)

合羽橋に降り立つとビッグなシェフがお出迎え。料理道具を探す旅の始まりです。

合羽橋に降り立つとビッグなシェフがお出迎え。料理道具を探す旅の始まりです。

「料理の味は道具で決まる」と、かつて何かの本で読んだ料理研究家さんの言葉がいまでも脳裏に刻まれています。それからは、料理道具を買うときはなるべく質の良いものを……と心がけてきました。値段は張るけれど、たとえば上質の鍋で肉や豆を煮ると、それはもう、ふっくらとおいしくできあがるのです。

煮ても焼いても万能な『ル・クルーゼ』のココット・ロンドや、お米を炊くための大きな土鍋など。まだ数は少ないけれど、1つ1つ自分で集めた宝物たち。

そんな「料理道具、大好き!」な私を友人が誘ってくれたのが、合羽橋。台東区の西浅草一帯に広がる、調理道具の問屋街です。

第2回の「東京ぶらり里帰り」に引き続き、東東京です。「合羽橋」の由来を調べてみると、江戸時代に合羽屋喜八なる人物が私財を投じて水はけの悪い土地を整備した、その姿に感銘を受けた河童たち(!)が作業を手伝った……という逸話が語り継がれているようです。

土地の由来をおもしろ伝説にアレンジせずにはいられない。江戸っ子らしい遊び心というか、またしても下町独特の文化に触れてドギマギとする西東京育ちの私です。「河童なわけないじゃん!」という野暮な突っ込みは慎んでおきましょう。

 

合羽橋は料理好きの聖地だった!

ぼんやりと「料理道具の問屋街」であることは知っていたのですが、問屋街って? 市場とは違うの? イメージが湧きません。主婦仲間の友人の「とにかく凄いから!」との言葉を信じて向かったわけですが……。

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凄い……! メインストリートである「かっぱ橋道具街」に軒を連ねる、料理道具店の数々。食器はもちろんのこと、飲食店でプロが使用する調理器具、厨房設備、包装用品、製菓材料、のれんに看板……何でも揃っている! 実際、プロの料理人らしき方々が買い出しに来ていました。

合羽橋が問屋街になったのは、大正時代にいくつかの道具店が軒を連ねたのがきっかけなのだとか。徐々に拡大し、浅草や銀座などの繁華街の御用達となっていったのでしょう。

その中でも一際風格を漂わせていたのが『釜浅商店』。明治41年に創業という老舗の料理道具店です。

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『釜浅商店』には大中小の中華鍋、行平、寸胴などの料理道具が1階から2階まで所狭しと並んでいます。

『釜浅商店』には大中小の中華鍋、行平、寸胴などの料理道具が1階から2階まで所狭しと並んでいます。

まさに「ないものはない」といった、徹底した品揃え。鮫皮のおろし板や、一般家庭ではあまり使われなくなってしまった鰹節の削り器など、料理道具フェチにはたまらない品も漏れなくあり、一気にボルテージが高まります。南部鉄のすきやき鍋とか、絶対にお肉がおいしくなる! 欲しい……全部欲しい!

圧巻だったのは、包丁の品揃えです。出刃、身卸し、剣型柳などの和包丁はもちろんのこと、ステンレスの牛刀などの洋包丁や、中華包丁も。さらに和包丁でも「白紙」「青紙」と素材が色々あり、九寸、八寸、七寸……と大きさにも違いがあり、駆け出し主婦の私にはまだまだ及ばない世界……。

でも、職人によって研がれた包丁たちは、そっと眺めているだけでも美しくて心が凛とします。

「白紙」とは砂鉄系が原料の包丁のこと。『釜浅商店』では包丁に銘入れもしてもらえます。

「白紙」とは砂鉄系が原料の包丁のこと。『釜浅商店』では包丁に銘入れもしてもらえます。

この時点で、「あらゆる料理道具を買って帰らねば!」という使命感に駆られてお財布が火を噴きそうな状況に。料理好きの聖地に迷い込んでしまった興奮が納まらず、冷静な友人に「まあ、待て」と諌めされながら、ひとまずランチをすることに。

あら、これはまたおいしそうな揚げ物のお店ですね〜。と、見せかけて……。

合羽橋といえばおなじみの食品サンプルのお店『東京美研』。自宅で用途はないのに買いたくなってしまいます。

合羽橋といえばおなじみの食品サンプルのお店『東京美研』。自宅で用途はないのに買いたくなってしまいます。

そう、食品サンプル。まさに日本独特の不思議カルチャーです。いや、もはや伝統工芸の域。ここまでリアルに再現できる技って本当に凄い! 揚げ物の衣はところどころに濃淡があり、サンプルと教えられずにお皿に盛ってあると、思わずかぶりついてしまいそうです。

プロ仕様の道具が中心の合羽橋ですが、個人宅で使えるアイテムも豊富です。『ル・クルーゼ』をはじめ人気の琺瑯鍋や、有名陶器メーカーの食器などがお得な価格で購入できます。表参道や自由が丘のおしゃれ雑貨店やセレクトショップに比べると3割安ぐらい。「あ、これ、お高い値段で買っちゃったなぁ……」と後悔した品がいくつかありました。今後、料理道具や食器を買うときは必ず合羽橋に来よう!

そして、合羽橋の注目すべき点は“グロス売り”です。特に包装用品や製菓材料は「100個パック」なんて当たり前。お菓子作りが好きで、友達に配ったりホームパーティーで振る舞う奥さまにおすすめ! もう、お店を開けちゃいますね。もちろん、ちょっとだけ買いたい人に小売りもしてくれます。

焼き型、ギフト用パッケージ、デザートカップなど、製菓材料が一通り揃う『伊藤景パック』さん。

焼き型、ギフト用パッケージ、デザートカップなど、製菓材料が一通り揃う『伊藤景パック』さん。

 

華やかさだけではない東京の素顔がここに。

今回訪れた合羽橋に限らず、さらに浅草橋のほうへと足を伸ばせば、プロ向けのさまざまな問屋街があります。おもちゃや花火、アクセサリーパーツなどの手芸用品。仏具、文具、人形などの専門店も密集しています。江戸時代には商人たちが賑やかに行き交っていたのでしょう。そして、いまも東京という巨大な都市の文化を支えて続けているのです。

目新しくて華やかなスポットが多く、ついそちらに目が行きがちですが、玄人の集う問屋街もまた東京の素顔。何より職人の手により作られたもの、上質のものに触れられるのですから、お買い物がてらの散策にぜひ足を運んでみてください。

合羽橋で調達したものたち。木製のトレイ、スクエアのお皿、琺瑯のバターケースとナイフ、夏の食卓に映える白のランチョンマット。どれも問屋街ならではのリーズナブルさ!

合羽橋で調達したものたち。木製のトレイ、スクエアのお皿、琺瑯のバターケースとナイフ、夏の食卓に映える白のランチョンマット。どれも問屋街ならではのリーズナブルさ!

■今回訪れた合羽橋のおすすめスポット
釜浅商店 http://www.kama-asa.co.jp/
東京美研 http://www.office-web.jp/tokyobiken/
CANION http://www.canion.jp/
伊藤景パック http://www.itokei.com/

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