槇村さとるさん×地曳いく子さんおしゃれ対談今の自分に本当に似合う服の見つけ方。
自分が似合うと思った服を着ていても、人から見て「イタい人」になっていないかどうか不安なもの。気をつけるべきポイントは? スタイリストの地曳いく子さんと、漫画家の槇村さとるさんに語ってもらいました。
槇村さとる(以下、槇村) あまりにも「今」とずれている人だと、どきどきしますね。
地曳 ’70年代や’80年代のテイストが流行っているからといって、若い人はいいけれど、私たちは気持ちがシンクロしすぎているから、そのまま着ると、「タイムスリップしてきた人」みたいになるでしょう。おしゃれに上手下手はあるけれど、「昔のおしゃれ凍結」は損をします。
槇村 化石化しているとか、呼吸がない、というようなイメージね。
地曳 そうそう、ファッションも呼吸と代謝が必要なの。それがきっと「処分する、買う」ということだと思います。いつも同じような、たとえばグレーのニットにダンガリーのシャツを着ている人でも、その時その時のものを着ていれば、その人のスタイルだからいいと思う。似合わなくなった服は処分して、ファッションはアップデートが肝心です。
シルエットのボリュームは、身長に合わせたバランスで。
地曳 髪や肌の色が変わってくるので、ベタッとした黒は似合わなくなってきます。私もそうですが、黒が大好きで着たいという人は、ちょっと透けるレースとか、上下の素材を別にするとか、ニュアンスのある黒を選ぶのがポイントです。
槇村 グレーはみんな似合う。
地曳 ネイビーもいいですね。明るめのネイビーは若くなってしまうから、濃いネイビーがおすすめです。いままで着ていた黒のアイテムを、ネイビーかチャコールグレーにシフトするといいと思います。
槇村 昔は似合っていた「白いシャツに黒いパンツ」が似合わなくなってきたら、パンツを濃いネイビーにするとかっこよく見えますね。有名モデルのように「ロング&リーン(長く細い)」の人なら黒のままでもいいけれど、私たちはロングもないし、リーンでもないから(笑)。
槇村 この年になると、小物も重要だなと感じます。靴は、まだ筋力的に高いヒールが履けるからといって、デザインが昔ながらのパンプスではダメ。
地曳 小物も服と同じで、バッグなら買って帰ってすぐ詰め替える、またはその場で詰め替えて、持って行ったバッグを「袋に入れてください」と言えるくらい気に入ったものを買いたいです。靴だったら、「このまま履いて帰るから、自分が履いてきたのは処分してください」というぐらい。
槇村 違う理由で処分したことはあります。足が痛くなっちゃって。
地曳 その靴は持ち帰っても、また足が痛くなるから。
槇村 そうなの、慣れるまで履く体力はないし……。体が教えてくれるんですね、この年代は。だからファッションは、自分中心になって選んでいいと思うんです。
地曳 みんな、もう一人の自分がいて、自分を着せ替え人形にしている感覚なんですよね。
地曳 50代のファッションの分かれ道は、靴かも。上がコンサバでもカジュアルでも、靴が中途半端なものだとダメになっちゃう。逆に靴がかっこいいと、キマッて見えます。スニーカーは、いまなら、〈ナイキ〉か〈ニューバランス〉の一番売れているのを履くといい。色は、白か黒かグレー。それで、上がスカートでもパンツでもなんでも、履いちゃう。
槇村 2〜3色は欲しくなります。
地曳 スニーカーを履くようになったら私、すごく歩くから痩せました。歩きやすそうだからと、おばさんっぽい形のウォーキングシューズにすることはないんです。
槇村 歩きやすさも、〈ナイキ〉や〈ニューバランス〉はいいですね。
地曳 私の友達は、足が小さい人や、背の低い人のほうが、服に対して厳しいです。似合うものが少ないから、工夫して完璧なファッションをしています。若い頃、何でも似合う万能タイプだった人は雑に服を買っていると思う。50歳を過ぎると体形が変わるから戸惑うんじゃない?
過去の「若さ」は忘れて、「今」の自分を楽しんで。
槇村 体形はゆるくなってきているけど、気持ちはまだ若い時のままで、ちょっと焦って締めれば戻れるかしら、と。そうなんだけれども、それでは気持ちが若いほうを向いているから、55歳、60歳の時にどうなりたいかという目標を作りにくいと思います。
地曳 自分の若い頃は過去ですよね。だから、自分の中にある「若い」は未来に進んでいるのではなく、過去に戻っているだけ。なので、人からはもっと昔の人に見えてしまう。
槇村 老ける、病気になる、どうなっちゃうのかしら、大変そうと、先のことを考えて憂鬱になるところを、「いよいよ素敵な女になろうよ」というふうに意識を変えたい。
地曳 うん、憂鬱になっている暇はないです。もっと楽しんで、人生折り返しを過ぎて時間がないのだから、いまのうちにやれることをやったり、自分が輝ける服を着ましょう!
◎地曳いく子さん スタイリスト/多数のファッション誌で活躍し、キャリアは30年超。著書に『服を買うなら、捨てなさい』(宝島社)など。
◎槇村さとるさん 漫画家/婦人服売り場で働く主人公を描いた大ヒット作品『Real Clothes』の集英社文庫コミック版(全6巻)が今年順次発売中。
『クロワッサン』921号より
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