「平安時代から脈々と続いていた日本独自の『黒の化粧』です。江戸時代は、例えば庶民の女性なら、歯が白く眉があるのは未婚。お歯黒をしていれば既婚。眉を剃っていれば子持ちというように、女性がどのような立場にあるかが一目瞭然だったわけですね。西洋的な美意識の台頭とともにジワジワと衰退していきますが、お歯黒は昭和30年頃、地方でまだ10人くらいしていた人がいたそうです」
眉の太さについても、昭和40年代の細眉流行から昭和末期の太眉ブーム、その後のコギャルの細眉など、通史にすると見えてくる美意識の変化が興味深い。
「戦時中は“化粧などもってのほか”と抑圧されていた印象があるかもしれませんが、実はそうではありません。物資不足でも白粉とクリーム程度は許されていました。日本女性のマナーや心がけとして化粧は必須だったのです。