そういう香山さん自身、ノンママのひとり。医師国家試験に合格して研修医になった1986年春は、まさに男女雇用機会均等法の施行の年。その第一世代の女性は現在50代前半。ようやく男性と同等に仕事をできる権利を得たばかりの頃に社会へ踏み出した世代は、現時点で出産経験がないなら一生子どもを産むことはないだろうと認識する年齢を迎えている。本書では、そんなノンママたちの置かれてきた社会的背景、これまで語られることのなかった職場や地域でのさまざまなプレッシャー、ハラスメントについて、あらゆるケースをもとに分析し、ノンママがどれだけ傷ついているのかを明らかにしている。
「たとえば’80年代、世の中の流れは、子どもを持たずに働く女性が輝いているとされていました。とはいえ、現実はまだまだ男性社会。まじめで努力家の女性ほど、出産よりキャリアを積むべく頑張ってきた。なのにここにきて突然『あなたのような人が増えると少子化が進む』などと言われて肩身の狭い思いをしているんです。子どものいない人生で納得している女性も、本当は産んだほうがよかったのでは、と惑わされている部分もあると思います」