詩人とはここまで言葉にこだわるのか。そう思うくらい伊藤さんはとことん粘り強く、遠慮なく、難解な仏教用語の意味を問い続ける。それに対して藤田さんは忍耐強く、ていねいに、説明する。
「伊藤さんはあくまで日常的に理解できる言葉を求める。でも伊藤さんが『隠語』という仏教用語も大切なんです。長い歴史とともに深い意味が湛えられていますから」
二人のやりとりのなかで、少しずつ言葉の意味がひらかれていく。その過程はスリリングでさえある。
「伊藤さんは言葉にドロドロした肉体性を込める人。僕も単なる教義ではなく身体的なアプローチが好きだから、対談はほんとうに、面白かったですよ」
その結果、本の中にはハッとするような表現が並ぶ。「お経は脚注、本文は坐禅」「乗馬は坐禅と相性がいい」「坐禅は静止しているのではない。あれは超微細な運動をしている」「寝た状態でズンバ(南米起源のフィットネスダンス)」などなど。その意味を味わうためにもぜひ本書を手にとってほしい。